キャラクターの考え方 キーワードは「作る」と「示す」  漫画やアニメなど様々な媒体で、キャラクターというものを目にするようになりました。作中の個性豊かな登場人物を見て、オリジナルのキャラクターを作り始める人は多いかと思います。ところが、どれも似たり寄ったりで個性的なキャラが作れない等、色々な悩みを抱えた人もいるはずです。そこで、今回は私なりのキャラクターの考え方を紹介していきます。  まず、語義から確認してみましょう。英語でキャラクターとは個人の性格を表す言葉です。日常的に使う場合は「○○なキャラ」と言いますが、要は「○○な性格の人、持ち主、登場人物」といったところでしょうか。次に個性とは、その人だけの性格や特性とあります。まとめると個性的なキャラクターというのは「その人だけに見られる○○という性格の登場人物」という風に私は理解しています。また、個性的なキャラという表現は意味が重複する気がしますが、キャラクターというからには個性的であることが前提なのだと思います。そして、私たちは現実の人や作中の登場人物を見て、この人は個性的だなと思うわけです。では、個性とは何でしょうか。そもそも、私たちは他人の個性をどのように理解するのでしょうか。その問いかけに次の例で答えます。  想像してみてください。あなたが道を眺めていると、誰かが歩いてきました。途中には道に迷っている素振りの人がいます。歩いてきた人は迷っている人に声をかけて、道を案内しました。その光景を見たあなたは「彼/彼女は優しい人だ」と思いました。  この例のように、私たちが誰かの人となりを理解するときは、「その人が何をしたか」を見て、判断しているはずです。「人助けをしているのを見たから優しい人だ」「勉強や仕事を頑張っているのを見たから真面目な人だ」「よく笑っているのを見たから明るい人だ」という風に、私たちは誰かの行動を通してその人の性格や個性を理解しているのです。決して、その人のプロフィールのようなものが先に手元にあって、私たちはその人がどのように行動するかを初めから知っているわけではありません。同様に、受け手となった私たちはあるキャラクターの行動を見てから、これは熱血キャラだ、おっとり系のキャラだとわかるわけです。それなのに、どうして私たちはキャラクターの作り手となった途端、性格や個性などのプロフィールの設定を先に考えるのでしょうか? このことも例を挙げて説明します。  もう一度想像してみてください。あなたが道を眺めていると、誰かが歩いてきました。あなたはその人を見た目の印象から優しい人だと決めました。そして、またもや途中に道に迷っている素振りの人がいます。優しい人なら道案内をするはずです。ところが、歩いてきた人はそのまま素通りしました。その人は優しいはずなのに人助けをしなかったので、あなたはその人のことがわからなくなってしまいました。  でも、それは考えてみれば当たり前のことです。だって、歩いてきた人を優しい人だと勝手に決めつけただけだからです。もちろん、実際はそうではなかった。だから、優しいはずの人が人助けをしないという矛盾が起きてしまった。それだけの話です。  こうした矛盾はキャラクター創作でも起こり得ます。ひとたび作り手に回ると私たちはまず性格や個性などプロフィールの設定から考えてしまいがちです。このキャラクターはこういうプロフィール設定だからこういう行動をする。でも、それでは先ほどの例と同じ矛盾にぶつかります。つまり、キャラクターが設定の通りに行動してくれないのです。そのせいで自分の作ったキャラクターのことがわからなくなってしまう。それを解決するべく新しいキャラを作り直したり設定を追加したりするわけですが、同じようなキャラしか作れなかったり設定だけが増えたりといった問題に直面してしまいます。  この問題を解決するには、考え方を変えてみる必要があります。キャラクター創作をするときには、二種類の発想があると私は考えています。すなわち、「キャラクターの設定を作る」と「キャラクターを行動で示す」です。前者は「このキャラクターはこういうプロフィール設定だから、こういう行動をする」という発想です。しかし、この「作る」の発想ではキャラクターが設定通りに行動してくれないために矛盾が起きることがあると既に述べました。そこで、新しく提案したいのが後者の「示す」の発想です。こちらは「このキャラクターがこういうプロフィール設定の通りであるためには、作者はキャラクターにどのような行動をさせればよいか?」と考えます。  これらの二つの発想は、プロフィール設定をどこに置いているかに違いがあります。「作る」の発想ではプロフィール設定がスタート地点です。対して「示す」の発想ではそれはゴール地点にあります。つまり、作っておいたプロフィール設定の通りであることを、キャラクターの行動によって、示す。言うなれば、キャラクターの人物像を証明するということです。だから、キャラを個性的に見せたいのであれば、創作したいキャラクターのプロフィール設定に合致していたり、それを想起させたりするような行動の内容ひいては物語を考えることが必要かつ重要になります。  では、今度は「そういうキャラクターであることがわかる行動って具体的にはどんなものがあるの?」という疑問を持つことと思います。しかし、ある場面や状況における人間の行動なんて現実には何通りもあるわけで、その無数の選択肢の中から、例えば「ツンデレなキャラであることがわかる行動」だけを探すなんて、かなり難しい作業であることは否めません。正直、把握し切れるものではないです。現実の人や誰かの作品のキャラクターを観察などして、地道に分析したり考察したりするしかないと思います。それでも、お決まりの行動パターンというものはいくつかあります。例えば、「口元に手を当ててオーホッホッホと笑う」という行動が挙げられます。こんな高笑いの行動をするキャラクターは大体、高飛車なお嬢様かどこぞの高貴なマダムだけだと相場が決まっているのです。もちろん、それだけでは限界がありますが、このような定番な行動を一通り把握しておくことはキャラクターの創作において欠かせないと思っています。型にはまっていると言うかもしれませんが、これは型破りするための型を覚えることだと考えてください。これらの型に、自分の好きな設定や要素を加えていく方法であれば、オリジナルのキャラクターを創作しやすくなると思います。  最後は、そのようないくつかの典型的な行動パターンのリストを紹介して、この話を締めくくることにします。 子供っぽいキャラクターの例 ・見栄を張ってブラックコーヒーを選ぶが、苦くて飲めない。 ・母親の真似をして化粧してみるが、口紅などで顔がぐちゃぐちゃになる。 ・新聞を無理に読むなど、外見的に大人の真似をする。 ・頬を膨らませて怒る。 ・背伸びした行動をする ・基本的に、感情と行動が直結している。 高飛車なキャラクターの例 ・口元に手を当てて笑う、高笑いする。 ・品のないものを嫌う。 ・一つ一つの言葉に棘がある。 ・ハンカチを噛みながら、悔し涙を流す。 ・キーッ!と怒る。 ・友達ができなくて孤立している。 ・手袋を投げつける。(西洋では決闘を申し込む際にするそうです) ナルシストなキャラクターの例 ・ことあるごとに自分で自分を褒める。 ・自信たっぷりな発言をする。 ・(男性キャラの場合)男性と女性で違う態度をとる。 ・失敗や欠点を認めない。 ・花(大抵はバラ)を持っていたりする。 ・わざとらしく髪をかきあげる。 ぶりっ子(主に女性)なキャラクターの例 ・男性の前で媚びる、甘えるような行動をする。 ・嫌な人に対しては腹黒い一面を見せる。 ・舌をぺろっと出して、頭をこつんと叩く。 ・嘘泣きをする。 ・自分の名前を一人称にする。「○○、難しいことはわかんな〜い」など。 熱血なキャラクターの例 ・深く考えず、直情的に行動する ・愛、友情、正義を語る。 ・とにかく努力をする。 ・感情論や根性で物を言う。 ・周囲の人を励ましたり、励まされたりする。 クールなキャラクターの例 ・あまり感情を表に出さない。 ・冷静に物事を考えて行動する。 ・単独で行動をすることが多い。 ・熱血なキャラクターとは馬が合わない。 ・理屈っぽく話す。 ※思いつき次第、追加していきます。 2015/11/30